このブログでは、
「開業前に行動した優先順位の高い事象」
開業前の準備は何をしたらいいんだろう、と
インターネットで「セレクトショップ開業」について検索すると、
「コンセプト」
「年齢層」
「価格帯」
を決めることからと書いてあります。
確かにどんな業界にせよ、開業前に当たり前のように決めなければいけないことだとは思います。
しかしながら、「セレクトショップ」に関してはいささか微妙なところ。
特に、OVIE STUDIOのブログを読んで頂いている皆様にとってはあまり決める必要の無いことかと思います。
というのも、
「コンセプト」は開業する自分自身の趣向とブランドをセレクトした後の形でしかないと思いますし、
「年齢層」はある程度ブランド自身が設定していますし、
「価格帯」はクオリティに伴っています。
つまり、
「コンセプト」「年齢層」「価格帯」
は必然的に決まるものです。
僕たちのような種類のセレクトショップでは、コンセプトを決めてセレクトする、というお店はあまり見かけません。
バイヤー自身の好みや、その時代に打ち出したいものがある種「コンセプト」になっています。
それを言葉にしているだけですので予め「言葉」として決める必要性を感じません。
好きなセレクトショップがある方はそのお店のコンセプトをHPで確認してみてください。
ほとんどのお店が、
「店主の好み」
「ある程度の範囲で何とでも捉えられるようなもの」
といったニュアンスになっているかと思います。
そもそもコンセプトを打ちだしていないお店も多くあります。
OVIE STUDIOは
「着る人によって変わる服」
というコンセプト。
OVIE STUDIOのstyleやブランドラインナップを見て頂くと納得して頂けるコンセプトかと思います。
今ままでにコンセプトについて話すことも無かったのでこの機会に少しお話しします。
根っこは大きく分けて下記2点。
①体型
②趣向
①
代表を務める僕は身長が190cmあります。
そのため、国内ブランドのS/M/L展開のLサイズが着用できないこともしばしばありました。
BRAND LOOKのサイズ感で着用することが出来るブランドは一握り。
それが可能で尚且つ僕自身の趣向に沿ったブランドを探していった結果が、今のOVIE STUDIOのラインナップです。
②
僕自身の趣向に沿った、というのはどういった点か、というと「日本人に似合う」衣服。
西洋に憧れを強く抱くような感覚ではなく、日本人に向けられた衣服です。
だからと言って、「和」を強く打ち出すスタイルではなく、
西洋の真似事から入った衣服の文化の結果として、導き出された日本服、といった感覚。
その衣服は、全体的にフラットな日本人の身体を綺麗に魅せます。
日本はモデル人口の少ない国だと言われています。
日本国内で開催される「東京コレクション」でさえ、アジア人という広い範囲で見ても、
ランウェイで歩くモデルの内の10-15%しかいない。
そのような環境下で、OVIE STUDIOに並ぶ衣服は日本人が最も似合うと僕は考えています。
パリで歩く人を10人、東京で歩く人を10人ランダムでピックした時に、
OVIE STUDIOのスタイルが似合うかどうかを判定すると、東京側に軍杯が上がるでしょう。
西洋の衣服とは違い、随所に「余白の美」を感じる衣服は、着る人と重力によってシルエットを変えます。
僕はその衣服を「着る人によって変わる服」として、コンセプトとしました。
このコンセプトを開業前から明確に決めていたというよりは、僕が始める以上自然とそうなった、という方が確かです。
お店を始めたいという方は、「そもそも」を辿ることでそれがコンセプトとなるのではないでしょうか。
次は「年齢層」について。
上である程度ブランド自体が設定している、と書きました。
例えば、「YANTOR」でいうと20代後半から30代のお客様が最も多く、
20代前半の方にも、40代、50代の方にもファンがいます。
そのような中で、20代をターゲットにする、50代をターゲットにする、と決めたところで何も変わりません。
デザイナーやバイヤー、店頭スタッフの年齢により多少の前後はありますが事前に決める必要のあることでは無いと僕は考えています。
最後に価格帯について。
これもある種必然のように決まります。
¥1,000のジャケットと、
¥10,000のシャツと、
¥50,000のカットソー
が同時に並んでいるお店なんてこの世に存在しません。
大げさではありますが、こういうことだと思います。
それに、バイヤーの「好きなもの」や、「提案したいもの」で大きくクオリティに差が出ることはあまりありません。
取り扱い希望のブランドをラインナップすることで必然と決まる事象です。
「コンセプト」
「年齢層」
「価格帯」
は頭を整理することで結果的に自然と出てくるもの。
この辺りで大体お店を始めるために必要な費用も分かってきます。
一旦、頭を整理して上の3つを具体化したら次に、
「ブランド」
「テナント」
「内装」
を順決めるといった流れ。
先ずは「ブランド」
セレクトショップである以上、ブランドの取り扱いを決めなければなりません。
セレクトショップを始めたい
という方の多くは、頭の中で幾つか取り扱いしたいブランドが浮かんでいるのではないでしょうか。
好きなブランド、提案したいブランドを揃える。
開業前の一番楽しいことであり、一番難しいことでもあります。
何故、難しいのか、3つ理由があります。
①バッティング
②デザイナーの意思
③信用
①バッティング
OVIE STUDIOのようなデザイナーズブランドと言われるブランドを扱うセレクトショップに存在する、珍しいルールです。
ブランドやセレクトショップによって基準は異なりますが、
「同商圏内での取り扱いを規制する」ルール。
真横に並んでいる似たようなラーメン屋や、
2分も歩けば2つか3つあるようなコンビニではありえないルールです。
名古屋の大須という地域にあるOVIE STUDIOで例えると、
「大須でOVIE STUDIOに並んでいるブランドを他ショップが取り扱うことは出来ない」
となります。
OVIE STUDIOのブランドの中には、「栄」という少し離れた地域までもお断りしてくださっているデザイナー様もいて、
企業名は伏せますが、大手セレクトショップからの取り扱い依頼を
「名古屋はOVIE STUDIOがあるから」
と話して頂いたこともありました。
理由もブランドやショップによりそれぞれですが、
「先に取り扱いをしてくれたから」
「OVIE STUDIOだから」
とお話ししてくださるデザイナー様がほとんどです。
目先のお金だけで考えたら間違いなく大手セレクトショップを優先した方が良いはずなのに、OVIE STUDIOのような小さなお店を選んで頂ける。
他のお店からの取り扱い依頼があったけど断りました、というお話を聞くたびに身が引き締まる思いです。
「衣服」や「お金」ではなく「人」を感じることが出来る瞬間です。
東京では同じ区内に2店舗、3店舗と同じブランドが並ぶお店があるらしいのですが、「東京」だけのルールが別であるみたいです。
もし東京での出店を考えている方がみえましたら、東京の店舗様に訪ねて頂けたらと思います。
②デザイナーの意思
セレクトショップが取り扱いの希望を出し、
バッティングの問題が無くても取り扱い不可なケースもあります。
その1つがデザイナーの意思。
「取り扱いを増やすことを考えていない」
「元々の関わりの無い人、お店とは取引をしない」
「生産数に限りがあるので取り扱いを増やすことが出来ない」
といった様々な理由があります。
一度ブランドに問い合わせをしてみなければ結果は分からないので一度尋ねてみるしかない点です。
②デザイナーの意思が強いブランドはいざ、連絡をしようとしてもHPがなかったり、あっても連絡先が掲載されていないことが多いです。
その場合、そのブランドの服についている品質表示(洗濯ネーム)を見てみてください。
法律で電話番号の表記が決められていますので、何とか連絡が取れると思います。
僕も幾つかこの方法で連絡をしたことがあります。
懐かしい。。
③信用
これが人によっては一番大きな壁になるかと思います。
①のバッティングというルールがあるため、
「この地域を貴方にお任せします」
とブランドに信じてもらう必要があります。
「信用」は商圏の大きさに比例して重要度が高まります。
大きな商圏であればあるほど、ブランドはしっかりとした提案をしてくれるお店に任せたいと考えるからです。
開業前はお店の写真もありませんので、初対面のデザイナーであれば「自分自身」以外に見せることが出来ません。
お店を始める前、に出会う訳ですから、「途中でお店を出すことを諦めたりしないか」も確かめられます。
ブランドにオーダーを提出した以上、やっぱりお店出すことを辞めるのでキャンセルさせて下さいは通用しません。
ある程度の資料を準備をすることは出来ますが、あくまで未来の資料である以上「人」を一番に見られます。
つまり、「信用」です。
元々、前職でバイヤーとしてデザイナーと面識があったり、プレスとして関わっていない限りほとんどが初めましてです。
僕の場合、「名古屋」という商圏の大きな都市で、尚且つ当時の年齢が「24歳」
もちろんデザイナーとの面識はゼロ。
そのような状況でしたので、取り扱いを断られてしまった経験もあります。
当時はお金を払ってでも信用を買いたいと思いました。
切実に。。
以上が若くして、尚且つ未経験でセレクトショップを始める方にとって③信用が最も大きな壁となる所以です。
①バッティング
②デザイナーの意思
③信用
を乗り越え、取り扱いブランドを確定させたら次はテナント(店舗)を決めます。
「ブランドを決めてからテナントを決めるの?」
と思いますよね。
ほとんどの業界が、先ずテナントを決めます。
テナントの準備が1-3ヶ月だとしたらほとんどの業界がテナントを決めてから仕入れを決めればオープンに間に合うから当然です。
(もちろん、仕入れ先に拘りの強いお店の場合は事前に仕入れ先を決めるケースも往々にあるかと思います)
僕らの業界の場合、9-11月にオーダーしたアイテムが1-3月に入荷します。
そのため、2月にオープンすると決めた場合、前年の9月には展示会に行ってオーダーをする必要があります。
オープンの約半年前です。
その時にテナントを契約してしまうと営業をしていないのに6ヶ月分の家賃を支払わなければなりません。
1からセレクトショップを始めよう、という方のほとんどがそのような余裕は無いと思いますのでブランドを決めてからテナントを決めるという順序になります。
「テナントの決め方」については、その地域によって異なる点。
当たり前ですが、「家賃」「場所」「雰囲気」等の条件が合えば、というところです。
欲を言えば、元々服屋さんが入っていたテナントだと改装にかける費用を抑えれる場合が多いです。
飲食店と比べて壁や天井の汚れが少なかったり、厨房がなかったり、
事務所のような蛍光灯ではなくライティングレールが最初から付いていたり、
入口がそのまま使えたり、
場合によってはバックヤードや試着室が元々あったりと、
自分で改装をしたらどれも多額になってしまうことばかりです。
OVIE STUDIOの場合は、ビルの3F。
元々服屋だったようで、カウンターやライト、業務用のエアコンが付いていました。
場所はメイン通りから1本ずれた、少し分かりづらい場所で営業しています。
一人一人のお客様とゆっくりお話したい僕や、スタッフにとっては最高のテナントです。
入荷量が少しずつ増えて、今の店舗のキャパシティを超えてしまっていますが移転したくないな、と思って変わらず営業しています。
今のお店の雰囲気を好きでいてくださっているお客様が多いので、当分移転の予定はありません。
移転という方法以外で模索中です。
店舗が決まったら、内装、内装が完成したら衣服をハンガーラックにかけていざ、オープン。
内装は店主の好みの一言。
OVIE STUDIOオープン当時の写真。
セレクトショップで色々なブランドを並べる以上、ブランドの個性を邪魔しない「白」基調で。
と初心者らしい浅はかな発想から真っ白な店内に。
当時は深く考えていなかったですが今となってとても気に入っています。
壁は日光が綺麗に反射するよう漆喰を手塗りしました。
カウンターも椅子も真っ白。
よく見るとドリンクメニューがありますが、今はありません。。
こちらも白。
店頭のお客様には「展示されてるみたい」と言われることがあります。
あまり見せ方に工夫せず、シンプルに並べているからでしょうか。
今でもただ単にハンガーラックとフックに衣服をかけるのみのシンプルな見せ方は変わっていません。
いつかの取材で語っている時の僕。
奥に吊るしている流木はビルの外から見えます。
初めて来店されるお客様は窓から見える流木を目印にされているよう。
こちらは昨年の写真。
入荷量が増えるにつれてハンガーラックや棚も増えてきました。
余談ですが、内装が思いの外時間がかかってしまい、OPEN日に間に合わせるために深夜までの作業が続きました。。
OPEN日前日から徹夜でなんとかOPENに間に合わせた記憶があります。
内装スケジュールは余裕を持って立てるのをお勧めします。
次の「何でお店を始めたんですか?vol.7」では、
よく質問される「やりがい」について書きたいと思います。
もし遠方で店頭に来られない方で質問等ありましたらお気軽にご連絡くださいませ。
oviestudio@ovie.jp
代表
吉田 健人
OVIE STUDIO(オヴィエスタジオ)
住所/名古屋市中区大須2-15-42竹内ビル3F
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